営業研修の効果を最大化する方法

近年、成果評価への移行や人材確保の観点から人材育成の重要性はどの企業でも高まっています。
その代表例である研修は、階層別のスキルアップ研修やパワハラ、コミュニケーションなどテーマ別の研修など様々な領域があり、研修の企画を行う担当者の方の負担も増しています。そう考えると研修の優先順位は経営課題だと言えるかもしれません。
そこで、今回は企業の業績(売上・利益)に直結している営業部門の研修に関して、どうすれば業績に対して最も効果的なのかを考えてみたいと思います。

■受注は現場で起こっているというシンプルな事実

営業研修の効果を最大化しようと考えた場合、誰にどの様な研修を行うのが最も効果的なのでしょうか?

多くの企業では、受注はお客様という現場で起こっているというシンプルな事実から現場の営業マンへの研修を厚く行います。
営業において直接お客様と接する現場は非常に大切です。いくら優れた商品であってもお客様が知らなければ購入しようがないのですから、そう考えた場合、現場に一番出ている営業担当者のスキルアップが業績である売上・利益に最も結びつくというのは事実だと思います。

そうなると現場である営業担当者へのスキルアップ研修が最も力を入れるべき所となるように思うのですが、営業担当者というのは若手の方も多く圧倒的に経験値が不足している場合が大半です。

つまり、受注というプロセスに対して途中の段階で様々な要因に躓いてしまう場合が非常に多いので、営業担当者へのスキルアップというのは項目が大変多く、 時間も費用も限りのある研修でフォローするのは実は難しいのです。

■営業現場にいる時間が最も長いのは担当者だが・・

そう考えると研修で営業のスキルアップを図り業績を改善していくのは、体型的に長期スパンで考える必要があるという事が分かります。
つまり、時間も費用もかなり多くかかるのが現実なのです。

しかし、現実には研修に費やせる時間も費用も限りがあります。限られた時間と費用で最大の効果を上げる為にはどの様に考えればよいのでしょうか?

営業担当者は前述した様に若手の方も多く圧倒的に経験値が不足している場合が大半ですので、受注プロセスの途中段階で様々な要因に躓いてしまいます。

逆に言えば、躓いてしまう段階ごとに適切にフォローする事が出来れば営業効率は上がり、業績は改善して行きます。

そう考えると彼らを管理して日々、指導・教育しているチームリーダーやマネージャーである中間管理職が若手が多い現場の営業マンを適切にサポートしていくのが最も効率がよいとも考えられます。

当たり前の話で恐縮ですが、個人とチームでは個人よりもチームの方が圧倒的に多くの売上を達成することが可能です。営業担当者という個人よりもチームリーダーやマネージャーという中間管理職を鍛え上げて、複数の営業担当者をチームとしてまとめ受注活動を行う方が効率的なのです。

問題はチームリーダーやマネージャーという中間管理職が、営業担当者がチームとして力を発揮するための部下への教育・指導スキルやコミュニケーションスキルを持っているかということです。

中間管理職は会社が正しい方向へ向かう様に経営層から発信される会社方針を正しくかみ砕いてチームメンバーである営業担当者に伝える役割と経験が少ないメンバーに対する教育・指導する役割があります。
そして、チームメンバーに対して適切なコミュニケーションを取りメンバーの能力をフルに発揮させながらスキルアップを助ける役割があります。

つまり、受注の現場にいるメンバーの能力をアップさせるには日々、彼らを教育・指導してコミュニケーションを図る中間管理職へのスキルアップサポート(研修など)が欠かせないのです。

■企業のボトルネックはどこにあるのか?

先程、現場のメンバーの能力をアップには中間管理職へのスキルアップサポート(研修など)が欠かせないと申し上げましたが、逆にそれがなかった場合はどうなるでしょうか?

中間管理職は名前の通り、経営層と現場メンバーとのパイプ役です。業務領域が広く、その業務量も多く中間管理職がボトルネックになり目詰まりを起こせば、現場のメンバーが能力を発揮できないばかりでなく経営層も現場の状況を把握することが出来なくなり、適切な経営判断を行うことが難しくなってしまいます。

しかし、スポーツの世界で名選手は必ずしも名監督にあらずという言葉がある様に、管理職にある者が営業の個人プレイヤーとして過去にいかに優れた業績を上げていても、管理や教育・指導に関するノウハウがなければ中間管理職として機能することが出来ずに、目詰まりを起こしてボトルネックになってしまうのは明らかです。

実は、この現象は中小企業から大企業まで多くの企業で起こっています。なぜなら、管理職への昇進試験や面談はなされても、管理職スキル習得のサポートは昇進試験と同時には十分には実施されないからです。そうすると、管理職への昇進早々、求められる業務内容の違いに戸惑い経営のボトルネックになってしまうのです。

プレイヤーから管理業務への移行は業務内容が明確に違います。管理職に必要なスキルの習得がなければ管理業務への業務移行はスムーズには行かないのです。

■プレイングマネージャーの落とし穴

中間管理職がつまづいてしまう原因は他にもあります。

個人、プレイヤーとして優秀だった人は、管理職になった後もメンバーの能力を引き上げるよりも、ついつい自分でこなしてしまう罠に陥りやすくなってしまいます。

なぜなら、メンバーの能力アップには時間がかかる為、短期的には自分自身でこなした方が楽なように思えるからです。もちろん、長期的に見ればメンバーの能力アップを図った方が効率的なのですが、管理職は会社から数字の責任を負っていますので、つい目先の結果に目が行ってしまうのです。

また、多くの企業では営業の管理職は、プレイングマネージャーとして管理職とプレイヤーの兼務で二足の草鞋の状態です。
プレイングマネージャーはプレイヤーでもありますので、プレイヤーとしての業務が多忙になるとマネージャー業務は二の次になり、マネジャー業務が後回しになることも多々あります。
そうなると、メンバーの効率が落ちてメンバー分の数字のマイナスが大きくなり、それをカバーする為の管理職のプレイヤーとしての業務は増々大きくなるという悪循環に陥ります。

そうでなくても、プレイングマネージャーはプレイヤーとしての業務がある為、マネージャーとしての業務時間が圧縮されています。
事実、業務の見える化を実施すると、多くのプレイングマネージャーは自分自身のマネジャー業務時間の短さに愕然とします。

※業務の「見える化」に関しては、当ブログの「仕事を「見える化」すると、業務があるべき姿へとシフトされて「働き方改革」が進む!」をご参考にしてください。

■中間管理職・マネージャーが優秀だと営業数字はどこまで伸びるのか?

ここで一つの成功事例をご紹介したいと思います。

ある建材メーカーの地方営業所の例ですが、この営業所は営業所長が変わると目覚ましい数字の伸びを見せました。
建材の世界は建築案件が首都圏に固まっているため、地方の売上が東京を上回ることは基本的にはあり得ないのですが、この営業所は東京の数字を上回る月度もある位の伸びを見せました。

この営業所長は、業務時間の効率化を図り無駄な会議を削減するなどして業務時間の20%を新たに営業活動にあてる事に成功しました。またコミュニケーションも必要な時間・回数に絞り込み徹底的に効率化を図りました。

これだけ大胆にも思える手法を取れたのも、この営業所長がマネジメント(管理・教育・指導)のノウハウを持っていたことが大きな要因なのです。

勇将の下に弱卒なし。メンバーの人数が多ければ多いほど上に立つ管理職の能力、ノウハウ次第で業績には大きな差が出てきます。

※当事例に関しては、当ブログの「テレワークを成功させる「見える化」営業マネジメントの方法」の「会議を削減して数字を伸ばしたある営業所のマネジメント手法」もご参考にしてください。

■中間管理職のスキル不足=業績の伸びしろ!

これまで中間管理職の重要性を見てきましたが、自社の中間管理職のスキルが不足していても、それを嘆く必要はありません。その場合でも今後、中間管理職への教育を強化していけば、現状の中間管理職のスキル不足は=業績の伸びしろととらえることも可能だからです。

現場のメンバーを管理するマネージャーには、少なくとも下記の3つの能力が必要です。
1.教育、指導に関するノウハウ
 メンバーの指導に必要な受注プロセスの把握とそのプロセスごとに必要事項の理解。
2.マネジメント・コミュニケーションに関するノウハウ
 業務進捗に関する見える化とサポートに関するノウハウ。心理的安全性などを構築するチームビルディング構築力。
3.数字管理ノウハウ
 直近3カ月程度の数字予測と不足分に対する対応策の構築ノウハウ。

マネジャーを統括する部長クラスであれば下記の5つの能力が欲しいところです。
1.数字のベース確保
 重点得意先を特定して、目標数字のベースを固める。
2.売るべき商品を決める
 重点商品を特定して、販売戦略を固める。
3.営業の行動を変える仕掛けを行う
 PL(損益計算)を営業マン個人にまで落とし込み、利益思考の浸透。
4.限られた時間で効果を最大化する
 現状の行動時間の把握 → 最適化(あるべき姿への改善)。
5.営業部門の風土を変える
 目標達成に対してチームとして協力的で積極的な行動を取る空気感の醸成。チーム内のコミュニケーションを活発化させ風土改善を実現させる。

もし、自社の現状が上記の理想とは乖離していても嘆く必要はありません。
上記の力が自社の管理職(部長、マネージャーなど)に備わっていなくても、その状態で現状の業績が確保できているなら、改善できた際の数字はとても素晴らしいものになるに違いないのですから!

■営業の中間管理職・マネージャー研修に必要な事。

現場のメンバーを管理するマネージャーであれば、上記の1「教育、指導に関するノウハウ」メンバーの指導に必要な受注プロセスの把握とそのプロセスごとに必要事項の理解があるだけでも、メンバーへの指導能力は全く変わってきます。

これが備わっていれば、受注プロセスをベースに理想のプロセスとメンバーのプロセスのギャップ分析をしての教育・指導がメンバーとお互いの共通理解のもとに実施が出来ます。

マネジャーを統括する部長クラスであれば、上記の1「数字のベースを固める」重点得意先を特定して、目標数字のベースを固めるノウハウがあるだけでも部門に対して目標を的確に差し示せます。

これが備わっていれば、部門メンバーと共通認識を持った上でターゲット選定(どのお客様へ行くのか)や、時間配分(何を優先するのか)も適切に設定することが可能です。

■研修を外部へ依頼する際に気を付けたいこと。

この様に考えると、外部の企業に研修の協力を求めるにしても、マネージャークラスへの研修であれば、営業の受注プロセスの把握ノウハウやそのプロセスごとに必要事項の収集ノウハウがある企業。
部長クラスであれば、重点得意先を特定して目標数字のベースを固めるノウハウを持っている企業に研修を依頼するのが望ましいでしょう。

また、研修は実践しなければ効果は1ミリも発揮されません。実践を促す為の仕組み。例えば営業ツールを作成、開発できるノウハウがあることも重要だと考えられます。

ちなみに、営業改善では独自に構築した「受注プロセス」を既に開発していますので、業界、企業特有の構造を貴社の営業マン様への取材で補完させていただき、その企業に最適な「受注プロセス」をご提供する事が可能です。

また、組織が数字を構築する為の仕組みに必要な、重点得意先を特定して目標数字のベースを固めるノウハウなど部長クラス向けの5つの手法に関してもすでに開発済みのみならず、老舗広告代理店にて実証済みです。

さらに、チームリーダーなどのマネージャー層が持つべきマネジメント・コミュニケーションノウハウに関しても「週間スケジュール」という一般的な営業ツールを使うことにより、誰でも受け入れやすくしながら独自の使用方法にて、数字(受注・売上・利益)達成率アップのノウハウもご提示することが出来ます。

ぜひ、みなさまの企業でも効果の出る営業研修を実施されて大きな成果を手に入れて頂ければと思います。最後までお読み頂きありがとうございました。

「営業改善」代表:黒田昭彦

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