仕事を始めたものの、メールが入る。
少し返信しているうちに別の仕事を思い出す。
そこへ社内から質問が来て、その対応をしていると、いつの間にか30分、1時間が経っている。
そして夕方になって、
「今日は忙しかったけれど、本当にやるべき仕事はあまり進まなかった」
という経験はないでしょうか。
タイムマネジメントというと、「何を、いつするか」を決めることに目が向きがちです。
しかし、予定を立てるだけでは十分ではありません。
決めた予定を、途中で入ってくる仕事から守ること。
これも、重要なタイムマネジメントです。
仕事を止めるのは「時間不足」だけではない
Forbes JAPANの「タイムマネジメントの本質は『時間』ではなく『アテンション(注意力)』にある」という記事では、メールや通知、突発的な会議などによって仕事が細切れになっている現状を取り上げています。
そして、「中断を生む仕組みから自分を守る」ことの重要性を指摘しています。
なぜ、中断が問題なのでしょうか。
例えば、午前10時から、
「来月の新規開拓先を考える」
という重要な仕事を予定していたとします。
ところが10時15分に、取引先からメールが入ります。
「少し確認するだけだから」
とメールを開き、返信します。
すると、その案件に関連する資料が気になり、資料を確認する。
そこから別の案件を思い出し、そのメールも返信する。
気がつけば、新規開拓の仕事から完全に離れてしまっています。
問題は、使った10分、20分だけではありません。
頭をもう一度、元の仕事へ戻さなければならないことです。
「切り替え」そのものにもコストがかかる
人は複数の仕事を同時に行っているように見えても、実際には注意を仕事から仕事へ切り替えています。
心理学の研究でも、タスクを切り替えるたびに「スイッチングコスト」が生じ、頻繁な切り替えは効率低下につながることが示されています。
さらに、仕事を途中で中断すると、次の仕事に移っても前の仕事について考え続けてしまう「注意残余(attention residue)」が発生し、次の仕事のパフォーマンスにも影響することが報告されています。
つまり、
仕事A → メール → 仕事A → 電話 → 仕事A → 社内対応
という働き方は、一見すると多くの仕事を処理しているように見えて、実際には何度も頭の切り替えを行っています。
この「切り替えコスト」が積み重なることで、重要な仕事がなかなか前に進まなくなります。
「すぐに対応する」と「忘れないようにする」を分ける
では、急に仕事が入ってきたときはどうすればよいのでしょうか。
もちろん、クレーム対応や重大なトラブルなど、本当に緊急性の高い仕事なら、現在の予定を変更してでも対応する必要があります。
しかし、仕事中に入ってくる案件のすべてが、
「今すぐ対応しなければならない仕事」
とは限りません。
私自身は、緊急ではないものの「後で対応する必要がある」と思った案件については、一旦、自分宛てにメールを入れておくという方法を使っています。
例えば、
「A社へ資料を送る」
「○○さんへ確認する」
「来週の打ち合わせ資料を確認する」
といった内容です。
その場では仕事を始めません。
忘れないように記録だけして、現在行っている仕事へ戻ります。
そして後からまとめて確認し、
「今日やるのか」
「明日でよいのか」
「今週中でよいのか」
を判断し、優先順位を整理してスケジュールへ入れます。
ポイントは、
「思いついた=今やる」ではなく、「思いついた=一旦記録する」
に変えることです。
自分宛てメールを「仕事の一時保管場所」にする
例えば、10時から11時まで企画書を作成すると決めているとします。
その途中で、
「そういえばA社へ見積書を送らないと」
と思い出したとします。
ここで見積書を探し、メールを作成し、送信してしまえば、企画書の作業はいったん中断します。
そこで、
件名:後で対応/A社へ見積書送付
と自分宛てにメールだけ送ります。
数秒で記録したら、再び企画書へ戻ります。
そして、設定しているメール処理時間に、改めて確認します。
その時点で、
- 今日中に送る必要がある
- 午後でも問題ない
- 明日の午前中でよい
などを判断します。
こうすれば、「忘れてしまう不安」をなくしながら、今やっている重要業務を守ることができます。
大切なのは「緊急かどうか」を判断すること
ここで重要なのは、新しい仕事が入ってきたときに、
「今すぐやる必要があるか?」
と一度考えることです。
例えば、
今すぐ対応する
- クレーム
- 重大なトラブル
- 今すぐ対応しなければ顧客や会社に大きな影響が出る案件
一旦記録して後で判断する
- 資料送付
- 社内からの軽微な確認
- 急ぎではないメール返信
- 思いついた別の仕事
- 来週以降の準備
というように分けます。
「仕事が入った順番」で処理するのではありません。
重要度と緊急度を判断して、自分のスケジュールを組み替える必要がある仕事なのかを考える。
ここがタイムマネジメントでは非常に重要です。
スケジュールとは、「やること」だけでなく「やらないこと」を決めること
私は「15分スケジュール」を使って、仕事を具体的な時間に落とし込むことをおすすめしています。
例えば、
10:00~10:45 企画書作成
10:45~11:00 メール確認
11:00~11:30 顧客への連絡
というように予定を決めます。
しかし、予定を決めても、10時5分に来たメールに対応し、10時15分に頼まれた仕事を始めてしまえば、スケジュールを作った意味が薄れてしまいます。
スケジュールとは、
「10時から企画書を作る」と決めることと同時に、「10時から10時45分までは、緊急案件以外の仕事をしない」と決めることでもあるのです。
つまり、
予定を作る → 予定を守る → 割り込みは一旦保留する → 後で優先順位を判断する
ところまでがタイムマネジメントです。
「すぐ対応する人」より「重要な仕事を前に進める人」になる
メールへの返信が早い。
頼まれた仕事にすぐ対応する。
それ自体は悪いことではありません。
しかし、すべてに即座に対応していると、他人から入ってくる仕事によって、自分の予定が次々と書き換えられてしまいます。
その結果、
・新規開拓
・企画の検討
・提案書作成
・将来に向けた準備
・重要顧客へのアプローチ
といった、緊急ではないけれど成果につながる重要な仕事が後回しになります。
仕事を効率化するというのは、単に作業を速くすることではありません。
切り替えの回数を減らし、重要な仕事に集中できる時間を守ること。
これも大きな業務効率化です。
新しい仕事が入ってきたら、すぐ始める前に一度、
「これは、本当に今やる必要がある仕事か?」
と考えてみてください。
緊急でなければ、一旦記録して、今の仕事を続ける。
そして後から優先順位を判断し、スケジュールに入れる。
この小さな習慣が、1日の仕事の進み方を大きく変えていきます。
タイムマネジメントとは、予定を立てることだけではありません。
大切な予定を、割り込みから守ることでもあるのです。
株式会社営業改善
代表取締役
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