良い施策は「現場・現状・現実」を知ることから始まる

先日、サントリーのジャパニーズクラフトジン「ROKU〈六〉」の開発ストーリーを聞く機会がありました。

ROKU〈六〉は、桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子という、日本の四季を感じさせる6種類の和素材を使用したジンです。

国内だけでなく世界各国で販売され、海外での販売が大きな割合を占めるグローバルブランドに成長しています。

この開発ストーリーを聞いて、改めて感じたことがあります。

それは、

「良い施策を考えるには、現場・現状・現実を知ることが欠かせない」

ということです。

日本人が好きな香りを、海外の人も好きとは限らない

ジンは市場が大きくないため、日本国内のジン市場だけを考えるのではなく、海外で販売していくために「日本のジン」としての特長が必要になります。

そこで、日本らしさを表現するために、桜や山椒などの和素材に着目したそうです。

ところが、開発過程で海外の方に試飲してもらうと、日本人には心地よく感じられる桜や山椒の香りが、必ずしも同じようには受け取られなかった、という話が印象に残りました。

考えてみれば当然かもしれません。

私たち日本人は、子どもの頃から桜や山椒などの香りに接しています。香りそのものだけではなく、「春」「和食」「日本らしさ」といった経験や記憶と結びついています。

しかし、その香りに馴染みのない人にとっては、初めて出会う「謎の香り」です。

逆に、日本人の中にも、欧米で珍重されるトリュフなどの独特の香りを、最初はあまり好ましく感じない人がいます。

つまり、

「自分たちが良いと思うもの」と「お客様が良いと思うもの」は、必ずしも同じではない。

机の上で考えているだけでは、この違いにはなかなか気づけません。

実際に商品を使ってもらう。
実際に飲んでもらう。
実際に話を聞く。

そこで初めて「現実」が見えてきます。

営業やマーケティングでも同じことが起きている

これは商品開発だけではありません。

営業やマーケティングでも、現場に行くことで、会議室では何時間考えても分からなかったことが、一瞬で理解できることがあります。

さらに重要なのは、現場には「問題」だけではなく、成功するためのヒントも多く存在していることです。

例えば、新規入会者やリピーターが多いスクールを見てみると、

入会時に必要な資料が分かりやすく一式にまとめられていたり、

コーチがレッスン終了時に、

「次はこのスキルを身につけましょう」
「そのためには、この練習をするといいですよ」

と次の課題を具体的に示していたりします。

そのため、受講者も自然に、

「では、次のレッスンも受けてみよう」

と思うようになります。

ところが興味深いのは、このような工夫を、現場の本人たちが「特別な施策」だと思っていないことです。

「昔からこうしています」
「普通にやっているだけです」

というケースも少なくありません。

つまり、成果を生んでいる成功パターンが、現場に埋もれているのです。

本部や経営者が現場を見なければ、その存在自体に気づきません。

当然、他の店舗や拠点へ水平展開されることもありません。

営業改善でも「現場を見る」と答えが変わる

営業の業務改善でも同じです。

例えば、

「新規開拓を増やしたいが、営業担当者に時間がない」

という相談があったとします。

机上だけで考えると、

「もっと効率よく仕事をしよう」
「訪問件数を増やそう」
「新規開拓の目標件数を設定しよう」

という施策になりがちです。

しかし、本当に営業担当者の時間がないのでしょうか。

そこで、「15分スケジュール」などを使って、営業担当者が実際に何に時間を使っているのかを見える化すると、

  • 社内資料の作成に時間がかかっている
  • 移動時間が多い
  • 優先順位の低い既存顧客への対応が多い
  • 会議と会議の間に細切れ時間が発生している
  • 営業担当者でなくてもできる業務を抱えている

といった実態が見えてくることがあります。

すると、打つべき施策は「もっと新規開拓を頑張る」ではなく、

「新規開拓に使える時間をつくる」

ことになります。

現状を正しく理解すれば、施策そのものが変わってきます。

成功している現場こそ見に行く

現場を見るというと、「問題点を探しに行く」というイメージを持つかもしれません。

しかし、私はむしろ、

「うまくいっている現場」「問題のある(普通の)現場」と両方を見る

ことが重要だと考えています。

同じ会社でも、

「なぜか新規開拓が進んでいる営業担当者」
「なぜかリピーターが多い店舗」
「なぜか案件化率が高いチーム」

が存在することがあります。

そこには必ず何らかの違いがあります。

ただし、その違いは本人にとっては普通の行動なので、言語化されていないことも多い。

だからこそ、現場へ行き、

何をしているのか。
いつしているのか。
どのような順番でしているのか。
他の人と何が違うのか。

を丁寧に拾っていく必要があります。

そこで発見した成功パターンを整理し、仕組みにして、他の営業担当者や拠点へ水平展開する。

これは重要な営業改善です。

施策を考える前に、「現実」が足りているか

会議室でアイデアを考えることも必要です。

データ分析も必要です。

AIを使って仮説を考えることも、これからますます重要になるでしょう。

しかし、それだけでは足りません。

仮説を立てたら、現場で確かめる。

そして、

現場を見て、現状を把握し、現実を知ったうえで施策を修正する。

この繰り返しによって、施策の精度は大きく変わります。

営業やマーケティングで思うような成果が出ていないとき、

「もっと良いアイデアはないか」

と考える前に、

「私たちは、本当の現場・現状・現実をどこまで知っているだろうか」

と問い直してみてもいいのではないでしょうか。

答えは、新しい会議資料の中ではなく、意外とすぐ近くの「現場」にあるのかもしれません。

株式会社営業改善では、営業担当者の活動を「15分スケジュール」「週間スケジュール」などで見える化し、成果につながる活動、削減できる活動、そして成果を上げている担当者の成功パターンを整理することで、営業の生産性向上を支援しています。

現場を知る。現状を見える化する。現実に合った仕組みに変える。

営業改善は、そこから始まります。

株式会社営業改善
代表取締役
黒田昭彦

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