【2022年7月25日改訂】
新型コロナウイルスの影響はなかなか解消されず、テレワークへの取り組みは業務改善や人材獲得の面から引き続き重要な課題となっています。
そこで今回は、テレワークでの成果が不安な経営層へ向けてテレワークを成功させる営業マネジメントに関して考えてみたいと思います。
目次
■テレワークの不安がなかった貿易商社「見える化」の秘密
まず一つの事例をご紹介したいと思います。営業部門のテレワークでも社員の業務推進に対して不安のなかった商社様の事例です。
この商社様はテレワークの推進を進める以前に営業部門に大きな悩みを抱えていました。営業にも関わらず業務が受け身で、問い合わせに対する回答が主な業務になっており積極的な新規推進などが皆無だったのです。
そもそも営業部門が現状、何をしてるのかもよく分からないため、どうしていいかが分からないというのがお悩みでした。
そこで、まず営業部門の「業務の見える化」を行い、営業が何をしているのかを把握するツールを導入しました。
結果的には、この「業務の見える化」を行った事によって社長様は「テレワークでも不安がなかった」と仰っていました。
テレワーク、業務の見える化というとIT、DXという単語が頭に浮かんできますが、ITやDXに頼らなくても「業務の見える化」は可能です。
手法は簡単で、業務を見える化する為の「15分スケジュール」という1枚のペーパーツールで実施が可能です。
「15分スケジュール」 は15分ごとに実施した業務を記録していくというごく簡単なものです。
事実、この商社様は私がこのツールを紹介した翌日に朝礼で社員の方々に紹介して、その日から導入を開始しました。それくらい簡単なものです。
■業務を見える化するツール
「15分スケジュール」は、その日食べたものや飲んだものを全て記録していくレコーディングダイエットという手法と同じもので、その日行った行動を全て記録していきます。
その日行った業務を全て記録しますので、その社員様の業務内容は全て見える化されます。
つまり、テレワークでもさぼりの心配をする必要がありませんし逆に働き過ぎの把握も可能です。
また、その記録を元に現状の業務内容とあるべき姿を見比べれば、そのギャップが行動の改善につながります。
15分というとかなり細かく手間がかかりそうに思われるかもしれませんが、2週間もすると慣れてきます。そして、慣れて来ると行動の優先順位が予め整理されているので生産性が高まり、忙しい人ほど便利で良さを実感する為、逆に手放せないツールになってきます。
つまり、「15分スケジュール」には会社側だけでなく、実施する社員側にも様々なメリットがあるのです。
共通するメリットに加えて、実は社員側の方がメリットが多い位です。
【共通のメリット】
・業務内容の可視化(見える化)
・目標「あるべき姿」になる為の効率的な時間の再配置
・業務効率の改善
【社員のメリット】
・TO-DOリストでは出来ない優先順位の明確化
・業務量が適切(キャパシティ内)かの確認が可能
・業務の時間見積りが精緻になり段取りが向上する
・スキマ時間が活用できる(予測できる様になる)
テレワークでは会社、上司への報連相やコミュニケーションが問題になりがちですが「15分スケジュール」を実施していれば、朝夕の本日の予定と結果の確認、もしくは夕方の結果とそれに対する対処の確認だけで全てが分かりますので、上司も部下もお互い何の心配もいりません。
この商社様は、非常事態宣言明けに他の会社がリアルオフィスに戻った際にもテレワークを維持しました。
海外とは時差がある為にWEB商談をするなら各個人が都合の良い時間に勤務が出来るテレワークと相性が良かったこともありますが「15分スケジュール」で業務内容の見える化が出来ていた為、サボりなどに関しては何の心配もなく逆に業務効率が上がったからです。
■数字を達成するチームと未達のチームの違い
テレワークを実施する際に一番心配されるサボりの防止、業務の見える化に関して説明をさせて頂きました。
ここからは業務の見える化の先、何をすれば数字は達成されるのか?という問いに対して考えてみたいと思い餡ます。
最初にあるセールスプロモーション会社の事例をご紹介したいと思います。
この会社の営業部門はチーム制を取っているのですが、数字を達成するチームと達成できないチームが明確にはっきり分かれていました。
どちらのチームメンバーもクライアントを訪問して一生懸命に提案して動き回っている様に見えるのですが、数字はハッキリと分かれていました。
別にチームメンバーはサボっていた訳ではありません。ただ、チームリーダーの管理手法が違っていたのです。
■成果を出す為の手法「週間スケジュール」
先程の事例でご紹介した「15分スケジュール」は業務を見える化するツールですが、営業部門を目的に導く、また思ったように動かない理由を把握する事が出来る「週間スケジュール」というツールがあります。
「週間スケジュール」は多くの企業で使われている特に珍しくもないツールだと思いますが、このツールは営業部門が思ったように動かない現状を把握するには最適のツールなのです。
ポイントはいくつかあるのですが、最も重要なのはフォーマットではなくコミュニケーションを取る為の使い方、マネージャーとメンバーとの対話です。
サボり防止と言いますが、現場の営業マンも別に業務を推進したくない訳ではなく、何らかの事情で止まる事が多いのが実状ではないでしょうか。
もちろんそれはマネージャーにとっては取るに足らない簡単なことかもしれません。しかし、経験のない現場の担当者にとってはそれは難しくて超えられない壁だったりする事も多いのです。
あるセールスプロモーション会社で数字を達成するチームの特長は単純でチームリーダーがメンバーとよく会話をしている事でした。
一つ一つの案件に関して、チームリーダーはメンバーに現状と対策を丁寧に確認していました。
逆に達成できないチームはメンバーにお任せで会話が多くはありませんでした。
ここで注意して欲しいのは、週間スケジュールに書かれてはいるが、毎週毎週同じ事が掛かれている事項です。
新規開拓などでよくありますが、アポ取りと書いてあるが一向に進まない。聞いてみるとやり方が分からない。そんな話がごまんと転がっていますが、解決するには丁寧に対話していくしかありません。
次に書かれている案件の合計数字で目標が達成されるのかに着目してください。
目標数字に満たない行動計画では、いくら完遂しても目標には到達しません。
笑い話みたいなことですが、部下に週間スケジュールを任せている場合はよくチェック頂かないと目標数字に到達しない週間スケジュールを追いかけていたという事がよくあります。
最後に行動予定にゴールが設定されているかを確認ください。
ゴール設定がない為にゴールを追いかける能動的な行動が取れずに受身なスケジュールとなり案件が前に進まないケースもよくあります、受身のスタンスではいつまでたっても受注に至らないのは皆さまご存じの通りです。
「週間スケジュール」は、管理ツールとして現場の営業マンが業務で今つかえている部分を把握する為に使うと大変有効です。
そして、現場の営業マンが業務で今つかえている部分に対して指導をすれば案件は自ずと受注というゴールへと向かっていきます。
結局、目標数字を達成するチームと達成出来ないチームの違いは「週間スケジュール」を使った現場営業マンのボトルネックの把握とそれに対する会話、指導がなされているかどうかの違いだけだったのです。
■会議を削減して数字を伸ばしたある営業所のマネジメント手法
ある調査によると、営業担当者は働く時間の約25%を無駄だと感じていて、その内容の1位は「社内会議(33.9%)」で2位は「社内報告業務(32.4%)」だそうです。
ここで3つ目の成功事例をご紹介させて頂きます。
とある建材メーカーの地方支店の事例ですが、この支店に新しく赴任された支店長は慣例化していた会議を撤廃して地方の支店であるにもかかわらず東阪の支店よりも数字を上げる位に業績を向上させました。
無駄と思われる会議でもいざ廃止するとなると勇気がいるものですが、実はこの事例からテレワークでの成功のコツを学べる事が出来るのです。
この事例の支店長が考えていたのが、踊る大捜査線風に言うと数字は会議室にあるんじゃない、営業の現場にあるんだ!という事です。
会議の為の準備にかかる時間と会議に使う時間。しかも、この会議に何人参加しているんだと思うと壮大な無駄にぞっとした。その時間を使って何で現場に行かないんだと思われたとの事。
そして、報連相に関してもシンプルに週末に「週間スケジュール」にそって結果とそれに対する対処(来週の動き)を確認するだけにされました。
これはテレワークだ!と気付かれたでしょうか?
もちろんコミュニケーションを軽視している訳ではありませんが、現場に出る営業活動時間を重視して非生産的な時間を極力排除したのです。
そして、会話、指導という部分では「週間スケジュール」というツールを使ってみっちりとやっています。
週に1回ですが週に1回だけの限られた時間だけにメンバーも相当真剣に計画を立てて報連相してきます。だから逆に濃密なコミュニケーションの時間が作ることが出来たのです。
これなら数字が行かないはずがありません。
■なぜ、多くの会社でテレワークのマネジメントはうまく行かないのか?
成功事例を3つお話しして来ましたが、では、なぜ皆がそうならないのでしょうか?検証してみたいと思います。
1.管理手法の誤り(勘違い)
動きや結果を管理するのではなく、目標、予定を管理しなくては「あるべき姿」にはいつまでたっても近づく事はないのですが、実際には逆の場合(動きや結果を管理している場合)が多くみられます。
動きや結果を管理してしまうと予定が仮に目標数字の80%で組まれていた場合、予定通りに業務進行しても成果は80%になってしまいますが、肝心の予定をメンバー任せにして管理せずに結果ばかりを責め立てる例が多くないでしょうか?
成果につながるのか分からない、内容のない予定では結果をいくら管理しても成果は出ません。
午前:メール処理、午後:資料作成
この様な日報は典型的な例で、こんな予定では実際には何をしているのか分かりませんし、そもそも予定にすらなっていないので成果というゴールにたどり着くはずもないのです。
2.報連相の運用方法の誤り(勘違い)
リアルオフィスであればメンバーの様子は目に見えます。報告、連絡、相談もありますし、定例的な会議も予定されています。
特に考えなくても仕事が回って行くのですが、テレワーク環境ではすべてがリニューアルされて、それぞれの事柄に関して意味を再定義して再構築していかなければなりません。
そもそも報連相は必要なのか?必要であれば頻度は?などそれぞれの事柄に関して意味を再定義して再構築しようとすると、考える癖のない管理職は大変困ったことになってしまいます。
テレワークでメンバーの姿が見えない事から不安になり過度な報連相を求めて、メンバーの効率が落ちるなどといった事象はここに問題があります。
3.一律の管理が向かないテレワークの特徴を理解していない
働く環境がリアルオフィスの様に一定ではないテレワークの場合、家庭環境にもよって対応を柔軟にする必要もあります。
それを踏まえていなければ成果を上げる事は難しくなりますしコミュニケーションも円滑には進みません。
例えば、緊急事態宣言下など非常事態の際には保育園なども休園となったりしますが、そうした場合、幼児のいる家庭では通常の勤務時間帯で就業することが難しくなります。
ある男性社員(妻子あり)の事例では、緊急事態宣言時に保育園の利用自粛で、子どもを預ける事が出来なくなり、共働きの妻と家事をシェアしたため、午前3時から午前11時までの勤務(妻は13時から21時の勤務)になったケースもあります。
■どうすればテレワークのマネジメントはうまく行くのか?
では、今度はどの様にしたらテレワークのマネジメントがうまく行くのか考えてみたいと思います。
1.管理の重点を結果ではなく予定管理に切り替える。
先程のなぜ多くの会社でテレワークのマネジメントはうまく行かないのか?の理由の対策になりますが、動きや結果を管理するのではなく、目標、予定管理に管理の重点を変えるという事です。
スケジュールが「あるべき姿」になっていなければ行動が「あるべき姿」になるはずはありません。
スケジュールが目標数字の100%以上で組まれて始めて結果を管理する意味が出てきます。
予定をメンバーに作成させるのは構いませんが、その予定が目標数字の100%以上の「あるべき姿」になっているかの確認は、そのメンバーを指導・管理するマネージャーには必須の仕事となります。
逆にそこさえ抑えておけばチームメンバーは確実に目標数字、あるべき姿へと近づいて行きます。
2.コミュニケーションを適切に行う(適切な量はメンバーの技量によって異なる)
「週間スケジュール」でチームメンバーの行動確認をする時にメンバーが困っている案件数は同じでしょうか?
もちろん、メンバーの技量によってかなりの差があるのではないでしょうか。つまり報連相などのコミュニケーションの必要量は各個人の技量によってかなり異なり、一定ではありません。
出来るメンバーに対しては思い切って任せる。出来ていないメンバーに対してはフォローの時間を大目にとる。また出来るメンバーに対して出来ていないメンバーのサポートを依頼するなどのさじ加減がマネージャーには求められます。
これは、テレワークのマネジメントだけでなくリアルオフィスでのマネジメントでも同じことだと思いますが、見えない部分(任せる部分)が多くなるだけにリアルオフィスでのマネジメントをベースに見直す必要が出てきます。
3.一定の対話を行いメンバーの状況(仕事を行う環境)を把握しておく
先程、出来るメンバーに対しては思い切って任せると言いましたが、完全なお任せはテレワークでは危険です。リアルオフィスの場合は、お任せであっても勤務中の表情なども確認が可能ですがテレワークの場合は意識してコミュニケーションを取らなければ単なる放置となってしまいます。
リアルオフィスでも行っていた様に1対1の面談をWEB会議でも定期的に行い、メンバーに対する状況確認は必要です。
テレワークは独身や単身者の場合には孤独を感じやすいですし、リアルオフィスと違い家庭環境など何らかの個別の悩みを抱えてしまう事も考えられます。
プライベートを細かく聞く訳にはいかないですが「何か聞いておいた方がいい事はありますか?」と水を向けて、メンバーが悩みを抱え込まない様にする事も重要になります。
■テレワークのマネジメントでお薦めしたい3つの手法
最後にテレワークのマネジメントで重要な事をまとめながら、お薦めしたい3つの手法をおさらいも含めてご紹介しておきたいと思います。
【テレワークの不安を消す具体的な3つの手法】
1.業務の「見える化」が実現する「15分スケジュール」の活用
テレワークのマネジメントの一番多いお悩み「サボり防止」に効果的な業務の「見える化」を実現する為には「15分スケジュール」が有効です。
「15分スケジュール」は社員側にも多くのメリットがありますし、逆に出来る社員が働き過ぎの場合その把握も容易ですので働き過ぎ防止の観点でもお薦めになります。
2.「目標数字」を達成する「週間スケジュール」の活用
これは、成果を出す為のキモだと思います。
仮に「15分スケジュール」で業務の見える化を実施しなくても「週間スケジュール」でマネージャーとメンバーが適切に業務進行に関するコミュニケーションを取り続けていれば成果は上がります。
導入の順番で言うと「15分スケジュール」よりも「週間スケジュール」の方が優先順位は先かもしれません。
3.一定の対話をチーム内に確保する手法
どうすればテレワークのマネジメントはうまく行くのか? の章で3番目に一定の対話を行いメンバーの状況(仕事を行う環境)を把握しておく重要性に関してお話をしました。
マネージャーのメンバーとのコミュニケーションの取り方はもちろんですが、チームメンバーのいわゆる「心理的安全性」の作り方まで踏み込めれば、顔の見えないテレワークでは非常に有効です。
チームメンバーが自発的に発言、会話をする環境を作るには定期的な雑談を含む「チームミーティング」が有効です。
チームリーダーがひとりで仕切るのではなくチームメンバーが各々役割を持ち、お題の設定や司会進行もチームメンバーが順番に行うなどの工夫を凝らして実施して行けば週1回のペースであれば3~6ヶ月で相当な効果が出てきます。
■明るい未来を作る為に
テレワークは考えようによっては体質改善して強くてよい会社を作るチャンスとも言えます。
ご紹介させていただいたテレワークのマネジメントを実践されて、御社の営業社員様が「あるべき姿」になられる事を願っております。
株式会社営業改善
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