ある人材派遣会社の調査によると今後、管理職になりたくない人は全体の80%超で特に40代、50代と管理職でバリバリと活躍するはずの年代の方が管理職になりたくない傾向が顕著でした。※マンパワーグループ「8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは?
その主な理由は、責任の重い仕事をしたくない、業務負荷が高い、面倒な調整業務が増える、部下育成に興味がないなどで、管理職になる事で調整業務や部下育成やマネジメントでの責任の重さに負担感がある様です。
実際に上司の方の多くは部下から報告・連絡・相談がないなど多かれ少なかれ部下との接し方に悩んでいます。
名選手、名監督にあらずではないですが、プレイヤーとして抜群の実績を上げた人でも苦戦するのが部下の育成です。管理職にはプレイヤーとは別のスキルが必要なのです。
しかし、業績の向上には優秀な中間管理職が必要です。
なぜなら多くのメンバーが成果を上げられるかどうかは、そのメンバーである部下を持つ管理職、マネジャーの力量にかかっているからです。
逆に優秀な中間管理職がいれば、レバレッジがかかって企業業績は加速して行きます。
上司と部下のコミュニケーションを改善する方法は既に多くの方法が紹介されていますが、実現に時間がかかるなど実行が難しい面があります。
そこで、営業改善では誰でも分かりやすい様に簡単に1つの事に絞り、マネジメントの軸を「結果やプロセスという過去」→「予定」へと変える事をお薦めしています。
いきなり結論を申し上げても???かと思いますので、これから順番にご説明して参りますが、この「予定マネジメント」であればやる事は1つですので分かりやすく、実施方法もツールを使うので簡単です。おまけに上司だけでなく部下にもメリットがあり皆がハッピーです。
■なぜコミュニケーションは重要なのか?「目標を達成するチームの特長」
部下から報告・連絡・相談がないなど部下とのコミュニケーションに悩む上司は多いのですが、そもそも上司と部下のコミュニケーションはどの位、重要なのでしょうか?
ひとつの事例ですが、ある広告代理店の営業部で目標を達成しているチームはチームリーダーであるマネジャーと部下であるチームメンバーとのコミュニケーションが密で毎日、業務に関して報告・連絡・相談を行っていました。
毎日、報告・連絡・相談を行い、コミュニケーションを取っていますので、チームメンバーが自分の力量で超えられない壁にぶつかった時でも、すぐさまチームリーダーが一緒にその壁を越えるための対策を考える体制が整っていました。
つまり、チームメンバーは目標に向かって自分の力量で越えられない壁にぶつかった時でも、そこにとどまる事なく目標に向かってスムーズに行動が出来たのです。
一方、未達のチームはチームリーダーであるマネジャーと部下であるチームメンバーのコミュニケーションがあまりありませんでした。コミュニケーションがないというよりも行動に関して部下にお任せになっており、チームリーダーは自分の数字を追いかける事に熱心になっており、部下の数字に対しては結果だけを聞いてまとめるという状況になっていました。
こうなると先程の目標を達成するチームとは全く逆の状況になり、チームメンバーが自分の力量で越えられない壁にぶつかった時には、その業務は長期間滞ることとなりました。結果、受注という目標に到達できない事が多くなり、数字が未達となったのです。
■部下が報告・連絡・相談に来ない理由
この様に業績を向上(数字を達成)させるためには、上司と部下のコミュニケーションは重要なのですが部下はなぜ上司に報告・連絡・相談に来ないのでしょうか?
よくあるのは「上司に話しかけにくい」というものです。
・上司に報告すべく機会を伺っている間に「なぜ報告がないのか」と叱られた。
・忙しそうだったので、声を掛けづらかった。
・過去にミスを報告した所「何でそんなことをしたんだ」と叱責された。
・連絡をしたのに「そんな連絡はしなくてよい」と注意された。
・業務の進め方を相談したら「自分で考えてやれ」と返された。
など、部下には部下の言い分があります。
平たく言えば、詰問・叱責(怒られる事)を避けたい。安心して何でも話せる環境(心理的安全性)がないとも言えます。
心理的安全性とは、周りからの批判を気にせずに安心して自由に発言できる状態を言います。
営業部門に置きなおせば、トラブルや数字の相談に関して、メンバーが躊躇なく上司であるマネジャーに報連相できる空気感といえます。
■「心理的安全性」の構築など、今どきの上司に求められるスキル
部下が積極的に報告・連絡・相談する為に「心理的安全性」が必要な事は多くの上司の方も知っている事かもしれません。
「心理的安全性」を構築する為には下記の様な事が必要だと言われています。
・均等な発言機会
上司が意見を聞いてくれる環境。
・競争よりも協力
上司が助けてくれる環境。
・ポジティブ思考
頭ごなしに否定しない。YES BUT/同意と示唆で育てる。
・部下を尊重
一方的な指導はしない。
・個別面談の実施
部下の話を聞く場を作る。
・腹を割って話すきっかけの提供
失敗談など自己開示を行う。
どれも、なるほどと思えるものです。ただ、いざ実行しようとすると意外に難しい所があるのも事実かもしれません。
また、最近では報告・連絡・相談はもう古い。「おひたし」でやるべきだ。「ほしかきとみかん」が重要など上司と部下の関係構築には新しい概念も出て来ました。
「おひたし」
お:怒らない
ひ:否定しない
た:助ける(困り事あれば)
し:指示する
「ほしかきとみかん」
ほ:褒める
し:叱る
か:共感する
き:聞く
と:問う
み:認める
かん:感謝する
かつては当たり前であったOJT(実際の仕事を通じて身に付けさせる教育方法)、体で覚えろ、俺について来い的なものは難しくなって来ています。
一方では上司、管理職は
・部下の自立、成長を促す為にはどうすればいいのか?
・部下を叱ってはいけないのか?
・ほめてもいけないのか?
・命令してはいけないのか
・「ありがとう」と言えば責任感は育つのか?
などと悩み、上司と部下のコミュニケーションは混迷を深めています。
「おひたし」や「ほしかきとみかん」は、素晴らしい理論で実践できれば優秀な上司になるのは間違いないのですが、このスキルを実践する事の難しさが悩める上司が減らない要因の一つではないでしょうか。
研修でも本でもよくある話なのですが、素晴らしいと感銘を受けたにも関わらず、難易度が高く実践が難しく実行を断念した人は意外に多くいらっしゃいます。
つまり、もっと簡単な方法でやる気さえあれば誰にでも出来る方法はないのかと考えてしまう訳です。
■意識調査にみる上司と部下にある要望と現実のズレ。
上司側は部下が報告・連絡・相談して来ないと悩んでいるのですが、1つ興味深いデータがあります。
2019年にエン転職さんが実施した「上司と部下の意識調査」では、尊敬する上司の良い点について1位は部下を守ってくれるだったのですが、2位以降は指示・指導が的確、知識や経験が豊富、いつでも相談が出来るです。
上司に期待している事も1位が自分の意見や考えに耳を傾けてくれるで、3位が明確な判断をしてくれる、4位は具体的なアドバイスをくれる、6位がいつでも相談にのってくれるとなっており、部下は上司に対して報告・連絡・相談して的確なアドバイスをもらいたいと思っている事が分かります。
■なぜ上司と部下のコミュニケーションがうまく行かないのか?
しかし、実際には部下は上司が望む程の報告・連絡・相談をしていません。
なぜ、この様に部下の要望と現実の行動はズレてしまうのでしょうか?
表面的な理由は、詰問・叱責(怒られる事)を避けたい。安心して何でも話せる環境(心理的安全性)がない。という事が考えられますが、具体的には上司の行動の何が問題なのでしょうか。
それは現状の業務管理の手法に現れています。
業務管理の現状は日報、週報、SFAなどですが、そこには主に業務の結果が記載、入力されます。
これで現状は確かに共有されるのですが、次の行動予定は不明の場合が多く部下にとって都合の悪い結果は共有されない為、上司は把握する事が出来ません。
いわゆる結果管理(受注出来た出来なかっただけの結果での評価・管理)では、教育が最も必要な部下に対して教育の機会が0になってしまいます。
またプロセス管理であっても結果をベースにした指導・教育では、部下側からは詰問・叱責になりやすく「なぜそうなった?」と管理者側は状況把握のつもりで聞いても、部下側からは詰問・叱責にしか聞こえず、言い訳を始めてしまう為に必要なコミュニケーションが成立しません。
■指導を有効にするたった一つの方法
では、どうすれば良いのか?
指導の軸を「予定」に切り替えるこれが答えです。
業務管理の時間軸は「結果」と「予定」の2軸がありますが、結果をベースにした指導・教育は部下側からは詰問・叱責になりやすくネガティブな雰囲気になりがちです。
その場合、部下は報告・連絡・相談を避けるようになり、結果として部下単独スキルでの営業活動が多くなり業務の成功率は低くなって効率は悪くなります。
一方、予定をベースにした指導・教育なら相談する内容が予定の為、結果という責任はどこにもありません。責任がなければ怒られる心配がないので部下側も報告・連絡・相談がしやすくなります。
また、報告・連絡・相談すれば、その後の行動は上司の合意を得ていますから結果に部下の責任はありません。
相談した時点で責任は部下からマネジャーへ移っているのです。
これで部下側からは、失敗しても責任は上司、成功すれば自分の数字という報告・連絡・相談しやすい状況が整うという訳です。
そして、上司側からも部下が報告・連絡・相談してくれないという悩みが解消され、上司のノウハウを得た部下の業務成功率のアップは上司のチーム全体の数字を押し上げて、結果的には上司の評価アップへとつながって行きます。
結果、予定をベースにした指導・教育は部下単独スキルでの営業活動ではなくマネジャーのノウハウが加味されるため成功率が高くなり業務効率がアップします。これが予定マネジメントの最大のメリットで、経営者なら知っておいて欲しい最大のポイントになります。
予定マネジメントは数字が出るので部下側も報告・連絡・相談がしやすくなり、密度の高い報告・連絡・相談が更に成功率をアップさせるという好循環が回り出します。
■「報告・連絡・相談」の仕組みの作り方
結果やプロセスという過去ではなく「予定」へとコミュニケーションの時間軸を変える効能を解説しましたので、指導の方向性や考え方はこれで分かりました。
では、どうやって予定をベースにした指導・教育「予定マネジメント」を実行して行けば良いのでしょうか?
予定をベースにした指導・教育の為には、部下の予定を把握する必要があります。
そこで、部下の予定を見える化する為に「週間スケジュール」を活用します。
「週間スケジュール」とは、取引先名、案件名、その案件の現状と到達すべきゴール、月曜日〜金曜日の曜日ごとの実施事項を明記した1枚の用紙です。
しかし、この用紙1枚が大変重要で数字を達成できるチームは、予定の時点で案件に対する問題点をつぶしてチームメンバーが行動できる、行動するしかない状態になっています。
これは一つの事例ですが、ある建材メーカーの支店長は管理に関して「週間スケジュール」をベースに報連相を週1回のミーティングに集約しました。
予定を「見える化」して、指導を徹底(相談時間を確保)すると同時に不要な報告・連絡の時間は省力化し、営業マンの稼働時間を最優先にしたのです。
その結果、地方の支店であるにもかかわらず主要拠点である東京よりも数字を上げる月もある位に業績を向上させました。
【「週間スケジュール」の必要事項】
☑1週間の行動予定の設定。
☑予定は全て書き出す。
☑結果は合意した行動予定の効果測定。
■まとめ「上司と部下のコミュニケーションを円滑にするたった一つの方法」
1.目標達成にはコミュニケーションが必要。
2.結果ではなく予定マネジメントにする。
3.週間スケジュールで仕組みを作る。
目標達成にはコミュニケーションが必要です。
目標を達成するチームは、コミュニケーションが活発で部下の悩みが即、解決する状況が作られています。
一方、目標が未達のチームはコミュニケーションが不活発で部下の悩みが蓄積して行動が停滞しています。
解決策は「心理的安全性(部下が何でも安心して話せる状況)」を作る事になります。
心理的安全性(部下が何でも安心して話せる状況)を作る為には、結果ではなく予定マネジメントにするのが効果的です。
動きや結果の管理ではなく目標、予定管理へとシフトさせます。
結果ではなく予定を相談すれば、責任の所在は部下から上司へと移動して相談しやすい状況が出来上がります。
予定の時点で案件に対する問題点を解決して、チームメンバーが行動できる、行動するしかない状態にすればチームとしての業務効率は自然とアップして行きます。
予定をベースにした指導・教育「予定マネジメント」の実行は、週間スケジュールで仕組みを作ります。
コミュニケーションを定期的に行うには、ツールの活用が有効で簡単です。
「週間スケジュール」であれば、用紙を配布するだけですので準備も実施も非常に簡単です。
これで週1回、報連相する機会が出来て予定マネジメントは定着して行きます。
私が力説するまでもなく中間管理職のスキルアップ、特に部下とのコミュニケーション力アップは企業の業績向上に直結する重要事項です。
ぜひ管理職、マネジャーへの教育にも力を入れて業績向上という明るい未来を手に入れてください!
株式会社営業改善
営業コンサルタント
黒田昭彦
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