中東での紛争の影響が、長引く可能性があります。
早期に解決すればよいのですが、そのような希望とは裏腹に、ことの起こりから早くも2か月が過ぎようとしています。
もちろん、国際情勢の先行きを正確に読むことはできません。
しかし、原油価格、物流コスト、原材料価格、為替、エネルギー価格などに影響が出れば、中小企業の経営には確実に波及してきます。
実際に身近なところでも既に影響は出ています。一例ですが、ナフサ不足は価格高騰どころか物がない状態を発生させて受注をストップしているカテゴリーもあります。
こうした外部環境の変化に対して、大企業は購買力、資金力、価格交渉力、人員体制などで一定の耐性を持っています。
しかし、中小企業はそうはいきません。
原価が上がっても、すぐに価格転嫁できない。
物流費が上がっても、取引条件を変えにくい。
人件費が上がっても、人員を増やせない。
売上が同じでも、利益だけが削られていく。
このような状況に加えて、スタグフレーション(景気停滞とインフレーションが同時進行する経済)が起こる危険性も考えておく必要があります。つまり、これまで通りの営業活動を続けるだけでは、企業の存続すら危ぶまれる状況にあるのです。
これまでの営業活動では、
「売上を増やす」
「新規開拓をする」
「取引先を増やす」
という考え方が中心だったかもしれません。
もちろん、売上を増やすことは重要です。
しかし、原材料費、燃料費、物流費、人件費が上がる局面では、単純に売上だけを追いかけても、利益が残らない危険性があります。
そのため、今後重要になるのは、
どの取引先に、どれだけの時間を投下するのか
という営業資源の見直し(営業活動の効率化)です。
営業の時間は無限ではありません。
中小企業であればなおさらです。
営業担当者の人数も限られています。
訪問できる件数も限られています。
提案書を作る時間も、見積りを作る時間も、フォローする時間も限られています。
今こそ営業活動そのものを見直す必要があるのです。
まず取り組むべきことは、取引先ごとの投下時間の見直しです。
売上金額だけを見ると、大きな取引先は重要に見えます。
しかし、実際には、
・打合せ回数が多い
・見積り回数が多い
・値引き要請が多い
・納期対応が厳しい
・利益率が低い
・クレームや調整が多い
といった取引先もあります。
売上は大きいが、営業・事務・制作・納品・管理に多くの時間を取られ、結果として利益が残りにくい取引先もあるはずです。
反対に、売上規模はそこまで大きくなくても、
・利益率が高い
・やり取りがスムーズ
・継続性がある
・紹介につながる
・今後の成長が見込める
・自社の強みが活かせる
という取引先もあります。
これからの営業は、単に「売上が大きい順」に大切にするのではなく、利益、将来性、投下時間、取引の安定性を含めて考える必要があります。
PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)で、取引先を見える化する

営業改善の観点では、取引先をPPM分析のように整理することが有効です。
たとえば、縦軸に「将来性」、横軸に「自社への利益貢献度」を置いて、取引先を4つに分けます。
- 利益も将来性も高い取引先
ここは、最も営業資源を集中すべき取引先です。
単なる受注対応ではなく、継続提案、年間計画、先回り提案、他部署展開などを行い、関係性をさらに強化していくべきです。
- 現在の利益は高いが、将来性に不安がある取引先
今の売上・利益を支えてくれている重要な取引先です。
ただし、その取引先の市場が縮小していく可能性があるなら、依存しすぎるのは危険です。
現在の関係を維持しつつ、次の柱となる取引先開拓も並行して進める必要があります。
- 現在の利益は低いが、将来性がある取引先
今すぐ大きな利益にはならなくても、今後伸びる可能性がある取引先です。
ここには、短期的な売上だけで判断せず、将来の重点顧客として育成する視点が必要です。
- 利益も将来性も低い取引先
ここは、営業の投下時間を慎重に見直すべき領域です。
いきなり取引をやめるという話ではありません。
ただし、訪問頻度、提案工数、見積り対応、個別対応の範囲などは見直す必要があります。
限られた営業時間を、利益も将来性も低い取引先に使い続けることは、今後の経営リスクになります。
パレート分析で、利益を生んでいる上位20%を見る
もう一つ有効なのが、パレート分析です。
多くの企業では、売上や利益の大部分を、一部の取引先が生み出しています。
いわゆる「上位20%の取引先が、大きな利益を生んでいる」という構造です。
ここで重要なのは、売上上位ではなく、利益上位で見ることです。
売上が大きくても、利益率が低く、対応工数が多い取引先は、実質的には会社を疲弊させている可能性があります。
一方で、利益率が高く、継続性があり、自社の強みを評価してくれる取引先は、これからの厳しい環境の中でも守るべき重要顧客です。
中東情勢の長期化によって、原価や物流費が上昇する可能性がある今、営業は「たくさん売る」だけでは不十分です。
どこで利益を残すのか。
どの取引先に時間を集中するのか。
どの市場に営業資源を振り向けるのか。
ここを見直す必要があります。
取引先の「今後の市場」まで見る
さらに重要なのは、取引先の現在だけでなく、今後の市場を見ることです。
株式会社営業改善の過去ブログでも、「中小企業の社長のお悩み、自社が今後どうなるかを知る方法。」と題して、「自社の今後を知るには、自社の立ち位置を知り、主要得意先の今後を予測することが第一歩」とお伝えしています。主要得意先が今後伸びる業界にいるのか、厳しくなる業界にいるのかを見極めることが、自社の営業戦略を考えるうえで重要です。
これは、今のような不安定な環境では、さらに重要になります。
たとえば、原油高、資材高、物流費高騰の影響を受けやすい業界なのか。
価格転嫁できる業界なのか。
最終需要が落ちにくい業界なのか。
公共投資、住宅、インフラ、設備投資、消費財など、どの市場に属しているのか。
取引先の市場が厳しくなれば、その取引先の発注量も減る可能性があります。
取引先が価格転嫁できなければ、自社への値下げ要請が強まる可能性があります。
取引先の業界が伸びれば、自社にも新たな提案機会が生まれる可能性があります。
つまり、取引先の未来は、自社の未来にもつながっています。
大きな外部環境の変化が起きている今は、中小企業こそ、営業方針を早めに見直すべきなのです。
今すぐにやるべきことは、次の3つです。
- 取引先別の利益を確認する
売上ではなく、粗利、利益率、対応工数を含めて確認します。
- 取引先別の投下時間を確認する
訪問、打合せ、見積り、調整、クレーム対応など、どれだけ時間を使っているかを見ます。
- 取引先の今後の市場を確認する
その取引先の業界は伸びるのか、縮むのか。
原油高、資材高、物流費高騰の影響を受けやすいのか。
今後も自社に利益をもたらしてくれるのか。
この3つを見れば、営業方針はかなり見えてきます。
今こそ、営業の「選択と集中」を考える時
中東情勢の影響がどこまで長引くかは分かりません。
しかし、原油価格、物流費、原材料費、エネルギー価格への影響が続けば、中小企業の利益は確実に圧迫されます。世界銀行も、中東情勢を受けて原油、LNG、肥料などの価格が大きく上昇したと発表しており、エネルギーや資材に関わる企業にとっては無視できない環境変化です。
だからこそ、今までと同じ営業活動を続けるのではなく、営業資源の使い方を見直す必要があります。
売上が大きい取引先ではなく、利益を残せる取引先。
今忙しい取引先ではなく、将来も伸びる取引先。
声が大きい取引先ではなく、自社の強みを評価してくれる取引先。
そこに営業の時間を集中させることが、これからの中小企業に必要な営業戦略です。
今後の不透明な環境に備えるために、まずは自社の取引先を整理してみてください。
どの取引先が利益を生んでいるのか。
どの取引先に時間を使いすぎているのか。
どの取引先の市場が今後伸びるのか。
どの取引先への依存を見直すべきなのか。
この見直しを早めに行う会社と、これまで通りの営業を続ける会社では、これから大きな差が出てきます。
中小企業にとって、営業は単なる売上づくりではありません。
限られた経営資源を、どこに投下するかを決める経営判断そのものです。
いま必要なのは、これまでの営業活動の延長ではなく、取引先を見える化し、利益と将来性で判断する営業です。
不安定な時代だからこそ、営業方針を見直す。
それが、中小企業がこれからを乗り越えるための第一歩ではないでしょうか。
株式会社営業改善
代表取締役
黒田昭彦
営業改善へのお問い合わせ





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